1月28日から2月1日まで、テンセントの起業家コミュニティ「青騰匯」によるグローバル視察の第1弾として、日本の小売の現場を訪ねるプログラムを実施しました。
参加したのは、永輝超市創業者の張軒寧氏、米未伝媒創業者の馬東氏、美団副総裁の王慧文氏をはじめとする30名余りの経営者です。無印良品、セブン-イレブン、蔦屋書店、マツモトキヨシ、ファミリーマート、ヤマト運輸など、日本を代表する15社以上を訪問しました。企業訪問や非公開の勉強会、第一線の経営者・専門家との対話を通じて日中の経営者が議論を重ね、これからの小売のあり方を探りました。
主な参加者
| 楊国安 | テンセント シニアマネジメントアドバイザー |
| 侯暁楠 | テンセント モバイルインターネット事業群 副総裁、オープンプラットフォーム 総経理 |
| 王蘭 | テンセント オープンプラットフォーム 副総経理 |
| 馬東 | 司会者 / 米未伝媒 創業者兼CEO |
| 張軒寧 | 永輝超市 創業者兼CEO |
| 王慧文 | 美団点評 上級副総裁 |
| 蔣昌建 | 学者 / テレビ司会者 |
| 虞江波 | 新光集団 総裁 |
| 瞿芳 | 小紅書(RED) 創業者 |
| 曾斌 | 毎日優鮮(MissFresh) 総裁 |
| 王寧 | フィットネスアプリ KEEP 創業者兼CEO |
| 沈亜 | 唯品会(Vipshop) 共同創業者、会長兼CEO |
| 焦岳 | 百果園 副総裁 |
| 李華 | 富途証券(Futu) 創業者兼CEO |
| 呂晋傑 | 楚楚街 創業者兼会長 |
| 葉大清 | 融360 創業者兼CEO |
| 徐育斌 | 豊巣科技(Hive Box) CEO |
| 劉楠 | 蜜芽(Mia) 創業者兼CEO |
| 李瀟 | 環球捕手 創業者 |
| 王凱 | 凱叔講故事 創業者 / 司会者 |
| 李鐳 | 微光創投 パートナー |
無印良品:世界に通用する小売ブランドの歩み
講師:松崎曉氏(良品計画 社長)
1980年に日本で生まれた無印良品は、「ノーブランド」という考え方を軸に、世界的な小売ブランドへと成長しました。
参加者は東京の良品計画本社を訪れ、松崎曉社長から経営理念とブランドづくりについて話を聞きました。松崎氏は、無印良品が大切にしている考え方を次の四つにまとめています。「資本主義ではなく人間主義」「大量生産・大量消費をよしとしない」「ブランド名やデザインで消費をあおらない」「本当に必要な要素だけを残す」。この理念が、年間数千億円規模の事業を支えています。
セブン-イレブン:世界最大のコンビニエンスストアチェーン
講師:伊藤順朗氏(セブン-イレブン・ジャパン 常務取締役)
セブン-イレブンは世界最大のコンビニエンスストアチェーンで、日本の小売業を代表する企業のひとつです。世界の店舗数は6万店を超え、売上高は1,000億ドル以上にのぼります。
伊藤順朗常務取締役は、経営を支える四つの仕組みとして、フランチャイズ方式、OFC(店舗経営相談員)制度、店舗設備、単品管理を紹介しました。日本の店舗は売場面積が限られるため即食商品に力を入れており、生鮮は果物が中心で魚は少なめ、物流は基本的に地域ごとに管理しているといいます。スマートリテール化が進む中国市場については、モバイルで顧客情報を集め、今後はアプリを通じて購買データを蓄積し、オンラインとオフラインの融合を進める考えを示しました。
蔦屋書店:世界で最も美しい書店のひとつ
講師:増田宗昭氏(蔦屋書店創業者)
蔦屋書店は日本を代表するリアル書店で、世界で最も美しい書店のひとつにも数えられています。2011年に開業した代官山 蔦屋書店は、書籍、映画、音楽、カフェなどの売場で構成され、ライフスタイル型複合店の代表的な成功例となっています。
代官山 蔦屋書店で一行を迎えた創業者の増田宗昭氏は、「私は変わり者で、経営者ではありません」とユーモアを交えて話を始めました。
「1日の来店客が1人、それも自社の社員だった」という時代から、「カード会員6,000万人以上、月間アクティブ会員5,000万人超」の現在まで。増田氏は、蔦屋書店の原点は「本を売るが、単なる書店にはしない」という発想にあったと振り返りました。Googleやアマゾンは「探す」場所で、蔦屋は「出会う」場所。モノへの関心が薄れた今、消費の中心はコンテンツ体験に移っているというのが増田氏の見方です。
ファミリーマート:攻めの経営戦略
講師:澤田貴司氏(ファミリーマート 社長)
ファミリーマートは2016年にサークルKサンクスと統合し、新たなグループとして歩み始めました。商品売上高は約3兆円(300億ドル)、店舗数は国内外で24,000店にのぼり、うち日本国内の18,000店は世界第2位の規模です。
1日の来店客数は1,800万人、従業員数は18万人。事業の柱は「中食」(持ち帰って家庭で食べる調理済み食品)で、サービス機能の強化にも取り組んでいます。いま最も伸びているのは、チケット販売とゲームのプリペイドカードだそうです。
澤田社長は講演のなかで、競合の商品を知るために毎日セブン-イレブンの弁当を一つ食べていると明かしました。
ローソン:ターゲット戦略とコンテンツマーケティング
講師:野辺一也氏(ローソン 執行役員)
ローソンは、テクノロジーと小売の融合で一歩先を行く企業です。毎日のPOSデータを集めてビッグデータとして分析し、発注量と入荷データを突き合わせて発注を最適化しています。さらにAIで出店候補地の1日あたりの売上を予測し、新規出店の判断に活用しています。
テクノロジーと並んで重視しているのがコンテンツマーケティングです。コンサートや美術館、展覧会のチケット販売で提携を重ね、三鷹の森ジブリ美術館のチケットを独占販売しているほか、Bilibiliとのコラボ店舗も展開しています。チケット販売で得られるのは手数料だけで、売上に占める割合も小さいものの、こうした提携が多くの消費者の支持につながっているといいます。
マツモトキヨシ:日本最大のドラッグストアチェーン
講師:松本南海雄氏(マツモトキヨシホールディングス 会長)
松本南海雄会長は、マツモトキヨシの事業の核は「集中」にあると語りました。創業期は健康関連の商品に絞り込むことで頭角を現し、今後も健康と美容の領域に軸足を置いていく方針です。
野村総合研究所:消費の高度化を研究するシンクタンク
講師:上野歩氏(野村総合研究所 執行役員)
1965年に設立された野村総合研究所は日本初の民間シンクタンクで、アジア最大級の戦略・ITコンサルティング企業です。
上野歩執行役員は、日本の小売業がたどってきた試行錯誤とそこから得られる示唆として、製造小売(SPA)の発展、特定の消費者層のニーズに合わせた商品づくり、大型エンターテインメントと小売の融合などを紹介しました。中国もいずれ欧米や日本と同じ経済環境と課題に直面し、小売は飽和に向かう。そのとき企業の成長を支えるのは、「消費者の新しい需要をどう生み出すか」を考え続けることだけだと指摘しました。
ヤマトグループ:日本最大の物流企業
講師:ヤマト運輸 経営陣
1919年創業のヤマトグループは、34社からなる日本最大の物流企業です。親猫が子猫をくわえて運ぶロゴマークには、「お客様の荷物を我が子のように大切に扱う」という思いが込められています。
参加者は主力の宅急便事業を視察し、三つの中核技術について学びました。RFIDによる入庫データとデータベースの照合(入庫処理と仕分けをそれぞれ10分で完了)、仕分け後に軌道で自動補充を行うAPF、自動仕分け機のFRAPSです。これらを組み合わせた倉庫システムによって、顧客に一貫した物流ソリューションを提供しています。
日中スマートリテール産業交流会
期間中には「日中スマートリテール・ユニコーン交流会」も開き、メルカリ、CASH、Origami Payなど日本の有力スタートアップの経営者と青騰匯の参加者が、両国の消費市場の現状と課題について率直に意見を交わしました。
わずか5日間でしたが、参加者は日本を代表する企業の経営者と深く対話し、日本の小売の実像を肌で感じることができました。青騰匯のメンバー同士でも非公開の勉強会やグループ討議が活発に行われ、互いの話に耳を傾け、考えをぶつけ合うなかで強い絆が生まれました。
「青騰匯グローバル視察」第2弾
続く5月には、一堂が再び青騰匯のために「日本の新しい文化を探る」視察プログラムを企画しました。美図、知乎、papitube、米未伝媒、咪蒙、微影など、中国を代表する企業の創業者40名近くが日本のコンテンツ業界の第一人者と出会い、何が生まれたのか。詳しくは第2弾の記事をご覧ください。

